この生徒さんは、これまで指導してきた中でも、最も記憶に残る生徒さんです。
最初に思い浮かぶのは、決断力、視線の強さ、実行力、そして背水の陣という言葉です。
数年前の春、4月だったと思います。
保護者様とお二人で面談に来ていただきました。
「どうしても医学部に合格したい。
他の学部には合格したが、あと一度だけ全力で挑戦したい。
そのために英語の克服が必要で、一対一で徹底的に指導してほしい。」
そのようにお話しされました。
一年で医学部合格レベルに到達する大変さ、復習方法、週1回の確認テストなどを丁寧に説明しましたが、面談の途中で「入会をご希望だな」と感じたことを今でも覚えています。その数分後、ご本人からはっきりと入会の意思を伝えていただきました。
弊社では一度持ち帰ってご検討いただくことが多いのですが、この生徒さんと保護者様は、その場で即決されました。「今年が最後。絶対にやる」という強い覚悟が伝わり、こちらも胸が熱くなりました。
授業が始まってすぐに気づいたのは、視線の強さでした。
一言も聞き漏らさないように、まっすぐ射抜くような視線。
圧倒されるほどの集中力で、「本当に今年で決めにきているんだ」と確信しました。
課題はいつも完璧。
10回と言えば12回やるような徹底ぶりで、迷いがありませんでした。
数学の話をしたとき、私が専門ではない科目でしたが学習法を何気なく紹介したことがありました。数か月後、「数学はどう?」と尋ねると、「先生に教えていただいた方法で、全範囲を1ヶ月で終わらせました」とさらっと言うのです。驚きました。
化学でも同じでした。入手困難だった問題集を手に入れてから、何周も繰り返し、本当に「完璧」と言えるところまで仕上げていました。
こうしたすべてが、「背水の陣」という言葉に集約されていると思います。
「今年が最後」「全部やり切る」という強い意思があったからこそ、これほどの速度と徹底力が生まれたのだと思います。
英語の勉強も同じでした。基礎の確認からスタートし、次の授業までに必ず完璧に仕上げ、週1回の単語テストも毎回満点。学習ペースはどんどん上がっていきました。
秋の全国模試では、英語の偏差値が20上昇しました。
その報告をしてくれたときの喜んだ表情を、今でもよく覚えています。
合格発表、入学、そして成績開示。
二浪目の一年を本気でやり切り、久留米大学医学部に合格しました。
成績開示では、
「先生、私、あと2点で特待生だったそうです」
と連絡をくれました。
現役時も一浪時も、医学部合格は難しかったようです。
しかし、二浪目のこの一年、本気の本気で努力を重ね、
合格だけでなく特待に“あと2点”まで迫った。
その努力の深さをあらためて感じました。
教える側としても、本当に思い出に残る一年でした。
この生徒さんについて、さらに詳しく知りたい方は、
こちらの体験記もご覧いただければと思います。