時として、人生を変えるような出会いがあるものです。
私の場合は、高校時代にありました。
1つ上の先輩が、アメリカの高校に交換留学で1年間アメリカで勉強し、帰国してから一学年下の私たちの学年に戻って来ました。たまたま私のクラスになり、席が前後になりました。
すごく頭の良い先輩だと聞いていましたが、とても気さくな方で、いろいろと話しをするようになりました。
私は当時、落ちこぼれていましたが、彼は、どのテストでも校内一番だったと記憶しています。
高校3年生でも、模擬試験で、総合全国9位とか7位とか、そんな素晴らしい成績だったと記憶しています。
『もともと頭が良いのだ』『才能があるのだ』『脳の回路が違うに違いない』
そう思うことによって、彼と私の違いを納得させようとしていました。
結局、その彼は、アメリカの超一流大学に進学することになりました。
私の想像の域を超えているその天才は、クラスのみんなから畏れられていたと思います。
渡米する直前、私はその彼にあるお願いをしました。
『留学の勉強で使ったTOEFLの教材を、もし迷惑でなければ譲って欲しい』
今でも、なぜ、このお願いをしたのかわかりませんが、このお願いが私を変えてくれました。
その彼は、快くお願いを受け入れてくれて、留学前の忙しいであろうある日、街で会いました。
しばらく話をして、教材を譲り受け、お別れしました。
帰宅した後、教材を紙袋から出して見てみました。
どのページもビッシリと書き込みがしてあり、白いページは1ページもありませんでした。全てのページが書き込みで真っ黒です。こんなテキストを見たことはありませんでしたし、その後も一度もありません。
またリスニング教材は当時、カセットテープでしたが、こちらもプレーヤーで再生すると、テープは伸びきっていました。
いったい何回このカセットテープを聴いたのだろう。何度聴けばカセットテープは伸びるのか。驚きました。本当に驚きました。
頭が良い人、才能があると思っていた人が、実は、とてつもない努力家だったのです。
私の考え方も根本から変わったように思います。
才能だけで生きている人なんて、そんなにいないはず。
少なくとも、私の周囲には才能だけで生きている人はいません。
どんなに才能に恵まれようが、頭が良かろうが、全員努力している。
この彼のTOEFL教材を手に取った時の驚きは今でも覚えています。
衝撃的とはこういうことを言うのだと思います。
今も、まだまだ彼の努力には追いつけていませんが、
彼からのプレゼントを手に取った衝撃が頭の中に刻まれていますので、
少なくとも努力を忘れる人間にはならずにすみそうです。
あの時、自分も少しでも努力では近づきたいと思ったからこそ、今の私があると言っても過言ではないくらい、衝撃を受けました。
私の人生を変えてくれたのは、ある天才から譲り受けたTOEFLの教材でした。
今でも、今まで出会った最高の天才は彼で、その彼は、すさまじい努力をする天才でした。