学生時代には、多くの素晴らしい教授との出会いに恵まれ、大きな影響を受けました。
その中の一人にアメリカ出身の教授がおられました。
大学の授業が全て終わり、あとは卒業式を待つだけというある日、私はオーストラリアに旅立つ予定でした。
その直前、大変お世話になったその教授のもとに、挨拶に伺いました。
近日中に旅立ちますと報告しますと、教授は少し真面目な顔になり、私にアドバイスを下さいました。
『オーストラリアに何をしに行くのかを忘れてはいけません。空港から飛行機に一歩足を踏み入れたその瞬間から、日本の地に足を着けるその瞬間まで、日本語は使ってはいけません。約束できますか。約束できないならば行くべきではありません。』
一瞬躊躇しました。厳しいアドバイスだと思ったからです。
しかし、私は、その教授を非常に尊敬していましたので、必ず意味があるのだと思い、その場で約束をしました。
帰国するまでの間、日本人留学生の中に入っても、私は事情を説明し、約束を守りました。
変な留学生に見えたでしょうし、何をそこまで…と思われる方は、当時も今もいらっしゃると思います。
しかし、私は、その教授との約束を守ることがどれだけ大切なことか、何となくわかっていました。
この約束を守れなければ、何も得られないような気持ちがしていました。
帰国するまでの間、その教授との約束を守ることができました。
帰国後、その教授は別の大学に移られていましたが、別のアメリカ人教授から、英語の成長を褒めて頂きました。
現在、大学入試の英語の授業が提供できるのも、TOEICである程度の点数が取れたのも、全て、あの教授との約束から始まったのだと思います。
先日、その教授がオーストラリアで活躍されているのを知りました。
思い切ってメールを送ったところ、丁寧な返信を頂きました。
約束を守った報告を数十年ぶりにさせて頂きました。
そのことに対するお褒めの言葉と、仕事への激励の言葉を頂きました。
特別な一日になりました。